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ルミネッセンスの話 (光と色の話 第10回) [光と色の話]

前回の話でルビーに紫外線をあてると700nm近くの光を発光する事をご紹介しました。このような自分で光を発する物質は他にもあります。鉱物だと蛍石やアダム鉱などです。

さて、学問上の定義では、蛍光はルミネッセンスという現象と言えます。ルミネッセンスは、ある物質がエネルギー(電磁波,熱,応力)を得た際に物質内の電子が低いエネルギー状態から高いエネルギー状態に励起されて起こります。この高いエネルギー状態は不安定なので、低エネルギー状態に電子が戻ってきます。この時、差分のエネルギーが、特定の波長の光として放出する現象を総称してルミネッセンスと言うんですね。

丁度遷移金属イオンの発色と逆です。イオンの色が電子を励起に使われる波長の光が吸収されて補色の色が見えるのに対して、ルミネッセンスは、励起された電子が安定した低エネルギー状態になる際に放出する特定の波長の光を出す現象です。

このルミネッセンスは、どうやってエネルギーを得たかによって更に分類されます。蛍石を加熱する事による発光は、熱ルミネッセンス。蛍石にブラックライトをあてて発光する場合は、光ルミネッセンスという具合です。他にも、蛍の光は化学ルミネッセンスで、酸化還元反応で生じるエネルギーで励起状態に移る場合がこれに当ります。北極や南極の夜空を飾るオーロラは電子ルミネッセンスです。太陽風に含まれる電子が、上空の大気分子とが衝突して光ります。更には、摩擦ルミネッセンスというのもあります。ガムテープを真っ暗な中で、ベリベリっと剥がすと一瞬稲妻のような青白い光が見えるのですが、これが摩擦ルミネッセンスです。コミックスで『サトラレ』という作品があるのですが、この中で氷砂糖をハンマーで叩いて暗闇の中で光を得る話があります。これも摩擦ルミネッセンスです。

電子が低いエネルギー状態から高いエネルギー状態に励起される原因によって区別出来ますが、全て、高エネルギー状態から低いエネルギーに戻る時に差分が丁度光として放出するという点では同じ現象なんですよ。
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コメント 2

アヨアン・イゴカー

>ルミネッセンスは、ある物質がエネルギー(電磁波,熱,応力)を得た際に物質内の電子が低いエネルギー状態から高いエネルギー状態に励起されて起こります。

面白い現象ですね。この記事全体、とても興味深く、拝読しました。
ところで、火打石で起す火なども、やはりこのルミネッセンスなのでしょうか?
by アヨアン・イゴカー (2008-09-20 10:26) 

optimist

アヨアン・イゴカーさん、こんばんは。
ルミネッセンスの話を面白く思って頂けて嬉しいです。
お訊ねの火打石の場合は、ルミネッセンスではありません。基本的にルミネッセンスの場合は熱は発せず発光するだけなので区別しやすいです。

火打石が光るのは実際に発火ているからですが、石英と鋼等の硬いものを強くぶつけるので、衝撃摩擦で高温になります。この熱で、欠けた鋼の破片(粉)が酸化されて高熱を発し発火するという現象です。
摩擦熱+発火する金屑(金属粉)を作る作業を同時に行う作業が火打石をカチカチとやる作業という訳です。

ルミネッセンスの実例はそのうちまたご紹介したいと思いますが、弱い光が多くて、なかなか写真に撮れずに困っています^^;
by optimist (2008-09-21 00:23) 

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