蛍石（フローライト）／ブルーフローライト

アメリカ産の蛍石です。サイズ：67mm×50mm

３個持っているニューメキシコ産のブルーフローライトの内の一つです。綺麗なブルーの六面体結晶が特徴的です。

この石は青ですが、本来無色透明のフッ化カルシウムの結晶である蛍石、自然界では色とりどりの結晶として産出します。基本的に蛍石は、希土類元素の混入により発色する事が知られています。ところで、前回中国産蛍石の回でお話した蛍石の消色について触れました。そこで、発色と消色について、少しご紹介しようと思います（できるだけ簡単にしたつもりですが、分かりにくかったらゴメンなさい）。

蛍石が多くのランタノイド系希土類元素を含むのは、主成分であるフッ化カルシウムのカルシウムイオンの半径とランタノイド系希土類元素のイオン半径がほぼ同じ事が原因の一つです。同じ位の大きさなので、カルシウムの入るはずの場所に希土類のイオンが入り込んで結晶化しちゃうんですね。
　
さて、工業的に様々に利用される蛍石ですが、人口的に結晶化させて透明なレンズを作るのもその一つです。レンズに使用する位ですから、不純物を少なくして透明度の高い結晶を作る必要があります。

因みに鉱物の色を消す方法には幾つかあります。一つは発色原因を取り除く事。カラーセンターによる発色やd-d遷移による発色は不純物が入る事で起こるので、この不純物を取り除けば良いわけです。他の方法として、阻害剤（インヒビター）と呼ばれる物質を添加する方法もあります。蛍石の場合は、原因となる微量不純物の除去により透明な結晶を得るのが一般的です。

取り除く必要があるのは、大別して酸化カルシウムと希土類元素です。前者はフッ化亜鉛を用いて取り除きます。亜鉛はカルシウムより酸素と結合しやすいので、蛍石（フッ化カルシウム）と混ぜて過熱し融解させると酸化亜鉛とフッ化カルシウムになるのです。出来た酸化亜鉛は、熱で気化してしまうので簡単に除去できます。このような作用をする亜鉛は、捕捉剤（スカベンジャー）と呼ばれます。

残るのは希土類元素です。これがあるとppm（百万分の幾つかを表す単位）オーダーでも色がついてしまいます。しかし、気化する温度も高く簡単に除去できません。ではどうするのでしょう？
実は、再結晶を繰り返す事で取り除きます。しかし、どんなに再結晶を繰り返しても微量の混入は避けられません。そこで、わざとストロンチウムなどを添加してから結晶化させるんです。ストロンチウムもカルシウムとイオン半径が近い物質で、蛍石に簡単に取り込まれます。でも希土類元素と違って発色しないんです。このように光学的に悪さをしない物質を添加してから結晶化させることで、相対的に希土類元素が取り込まれる確立が低くなります。その上で何回か結晶化を繰り返す事で、純度の高く、非常に透明な蛍石（フローライト）の結晶が得られるんです。

タグ：アメリカ産 フローライト 蛍石 ブルーフローライト 蛍光鉱物

コメント 6

これはこれは、青色、青。空の奥底の青色。
by アヨアン・イゴカー (2009-04-19 21:32) 

アヨアン・イゴカー さん、こんばんは。
この蛍石は、持っているブルーフローライトの中でも最も澄んだ結晶で、気に入っています。
by optimist (2009-04-19 22:23) 

こんにちは。
説明、結構イメージがつかめました！
ありがとうございました（^^
by Bacchus (2009-04-20 02:24) 

Bacchus さん、こんばんは。
もっと上手に説明できれば良いのですが・・・。
それにしても、色々考えるものだな～と感心してしまいます。
by optimist (2009-04-20 21:57) 

カメラやフィールドスコープの蛍石のレンズって、ひところほどではありませんがやはりお高いんですよね。でも、これだけ手間暇がかかるのですね。なるほどー。納得です。
「これがあのフローライトなの？」とレンズをしげしげ眺めているとブラックライトをあてたらどうなるんだろう、とついつい考えちゃいますねー。
by 素風 (2009-04-21 10:17) 

素風 さん、こんばんは。
私はカメラは使い込んで無いので、蛍石レンズは使った事はないのですが、カメラを使っている人は、この蛍石ネタは、馴染みがあるのかコメントが多い気がします。
さて、疑問を持たれたブラックライトをあてると・・・ですが、多分蛍光しないんだと思います。蛍光の原因である希土類元素の量が非常に少ないからです。手元に蛍石レンズがあれば試してご報告したい所なのですが、生憎持ってないので、検証出来までした＾＾；
by optimist (2009-04-22 23:05)